自然農で野菜をつくろうと決めたら、まず最初の仕事は畝立てです。
畝立てとは畑に小さな山のように土を盛って、そこの上で野菜を育てるための場所作りです。この畝が上手に作れないと野菜作りも上手くいきません。
いきなりきれいな畝を作りましょう、と言われても長さや幅、高さなどは一体どうすればいいのか疑問ばかりですよね。そこで今日は自然農の畝立てのコツやポイントなどをできるだけ細かく、初めてでも迷わずにきれいな畝が立てられるように詳しく紹介したいと思います。
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そもそも畝立てをするのは何のため?
これから自然農を始める方の中には、そもそも何のために畝立てをするのかと疑問に思っている方もいるかと思います。自然農において畝立てはとても重要な複数の意味を持っているのです。
①適度に乾燥した状態を作る
多くの野菜は湿った場所よりもある程度乾燥した土を好みます。畝を作ることで水分は下の溝のほうに流れていくので、畝の上は乾燥した状態になります。栽培する野菜の種類にもよりますが土が湿っていると特に種はすぐに腐ってしまいます。
②栽培作業がしやすい
畝を立てて両サイドに溝を作ることで自分は一段低い位置で、作物は一段高い位置を作ることができます。畝を立てないとより腰をかがめた状態になるのでとても疲れてしまいます。
③他の草と見分けやすくするため
畝を立てずに地面に直接種を撒く場合、発芽はするかもしれませんが他の草と混じってしまい見分けるのが大変になります。そういった栽培方法もあるのですが特に収穫の時には野菜を見つけるのに一苦労しますし、草刈りする時に誤って野菜まで刈ってしまう可能性もあります。
畝立ては赤ちゃん野菜のベット作り
自然農では基本的に自然に任せて野菜を育てます。畝を立てることは不自然なことのように思われるかもしれません。しかし畝を作ることは野菜が成長しやすい環境作りなのです。
畑には色々な草たちが生活しています。その中に赤ちゃんの状態の野菜の種や苗を植えてしまうことは人間で言うと、大人の社会の中に赤ちゃんを放り込むようなものなのです。
赤ちゃんには赤ちゃんが安心して成長できる環境が必要です。それが畝作りをする最大の目的なのです。
畝立てに必要な道具
では次に畝立てに必要な道具を紹介したいと思います。
- 剣先スコップ(畝のラインを切ったり、溝の土をあげる)
- ノコギリ鎌(畝を立てる場所の草刈り)
- 鍬(溝の土を畝の上にあげる)
- 紐・ロープ(畝をまっすぐ作るための目印をつける)
- 目印棒(紐を結んで固定するため)*太い枝などでもよい
3・4・5はどうしても必要なわけではありませんが、はじめのうちはあると作業がスムーズだと思いますし、今後必要な時があると思いますのでできれば最初に用意しておきましょう。
4、の紐はビニールの紐よりも麻紐の方が何かと使いやすいです。もし切れてそのまま畑に残っても問題ないのでオススメです(長い棒などで代用してもよい)。紐を巻きつけておくための田引き棒(たひきぼう)と言う道具があると便利ですが、太めの枝などで代用しても全然構いません。
畝立ての基本原則
①畝は基本的には南北につくる
畝は基本的には南北の向きに作ります。理由は日光を野菜に均一に当てるためです。畝を東西に立ててしまうと、他の野菜の陰に入ってしまうので成長の妨げになってしまいます。
しかし畑の環境によっては山間部の棚田などはどうしても南北に作ることが難しい場所もあると思います。そういった場合は仕方がありません。野菜同士の株を少し広めにするなど臨機応変に対応していきましょう。
②畝をつくるタイミング
畝を作るタイミングは冬がオススメです。冬は基本的に農閑期といって農作業がひと段落する時期ですので、このタイミングで春や夏などに作る予定の畝を立てます。もちろん春や夏に畝立てしても構いませんが、その時期は種まきや草刈りなど他の作業で手一杯になってしまいます。
また畝立ては結構な重労働ですので、真夏の炎天下の中ではとてもキツイです。その点冬だと作業で体が温まっていいのです。
③畝の幅と長さと高さの決め方
畝の幅は基本的には80センチから1.2メートルくらいが一般的ですが迷った時は、両サイドの溝から作業や収穫の手が届くくらいの幅がいいでしょう。カボチャやスイカなどのツル系の野菜を育てる時はツルが伸びて隣の畝までいってしまわないように広めに3メートルくらいで作る場合もあります。
畝の長さは畑の大きさと作業のしやすさで決めるといいでしょう。あまり長すぎると隣の畝に移動しずらくなるので注意が必要です。
畝の高さは作付けする野菜によります。畝は高くするほど乾燥しやすくなりますし、逆に低くつくると湿りやすくなります。乾燥を好む野菜と湿り気を好む野菜の特性をよく考慮して決めるとよいでしょう。
畝の幅と高さについてはそれぞれの野菜の解説でまた詳しく紹介したいと思います。
人力でまっすぐな畝立てのやり方を紹介
①作付けする野菜を決める
まずは作付けしたい野菜を決めましょう。はじめのうちは作業に慣れていないことや思わぬトラブルがあると思いますし、世話しきれなくなってしまう可能性もありますので、あまりたくさんの品種を手にかけない方が良いです。
②畝の場所の決めて草を刈る
作付けしたい野菜が決まったら畝立てする場所を決めましょう。畝の場所の決め方は作付け予定の野菜が日当たりが良いところを好むのかそれとも半日陰を好むのか、乾燥を好むのか湿り気を好むのかを調べて自分の畑の中の適した場所を選びましょう。
また野菜によって野菜同士の相性というのがあって、近くで育てるとお互い育ちが悪くなったり、虫に狙われやすくなることがあります。これは少し難しいので違う記事でまた詳しく紹介したいと思います。
場所が決まったら次はその場所の草を刈ります。この時に気を付けるポイントはできるだけ草の根っこや葉っぱを残さないようにすることです。根っこが残ると特に宿根草という種類の草はいくらでも再生してきます。なので草を刈る時はノコギリ鎌の刃の部分を土の中に差し込むようにして根っこから断ち切ります。
草の葉っぱ(枯れ葉は残っても大丈夫です)は土の中に残ると、中で腐り発酵してしまいガスが発生すると野菜の成長を妨げてしまいます。また土の中に小さな石があるのはとくに問題ないのでそのままで構いません。
刈った草は後々使うので、畝を作る場所の外に一旦出しておきます。
③目印をつける
草が刈り終わったら次は畝の外周と溝を切るところに目印となる紐を張ります。これを目印を付けずに目測で行うとまっすぐできないので、面倒かもしれませんがきれいな畝を立てるとても重要な工程です。紐などがない場合はまっすぐの長い棒でも構いません。
④溝をつくる
目印の紐が張れたら次は目印に沿ってスコップを差し込んでいきます。これを溝を切るといいます。溝と平行になるように立って片足でスコップを踏み込んでいきます。スコップを抜く時はそのまま引き抜くと力が要りますので、刺さったスコップを少し前に倒して空間を作ってから抜くを抜きやすいです。
溝の位置が切れたら次は、溝の土を畝の上にあげていきます。この時に前進しながら掘り進めるのではなく、順番に後ろにさがりながら掘っていくとやりやすいです。一度にたくさんの土をスコップにすくってしまうとかなり腕力を使いますので、特に女性の方は少しずつすくう方がいいでしょう。
スコップからこぼれた土は、あとでまとめてすくい直すか平鍬ですくう方が楽ですので、とりあえずはどんどん掘り進めていきましょう。
⑤畝をきれいに整形する
溝の土を掘り終えたら次は畝をきれいに整えます。畝の形は平ではなくかまぼこ型にします。その理由はやはり畝をできるだけ乾燥させるためです。かまぼこ型にすることで水分が溝のほうに流れやすくなるのです。
溝からあげた土でかたまっているところはノコギリ鎌の背や鍬の背を使うなどして崩しておきましょう。また余裕があったら畝の端の部分を鍬や三角レーキなどを使ってあらかじめ少しだけ削っておくといいでしょう。そうすることで雨などで畝が崩れるのを防ぐことができます。
⑥補いを撒く(必要に応じて)
これまでに慣行農法をしていた畑や地力が低そうな畑の場合は、必要に応じて補い(おぎない)をしておきましょう。
自然農の補いとは、一般な農法でいうところの肥料を撒くことにあたります。なぜ補いと言うかというと土に栄養を与えるのではなく、土を削ってしまった分を補うからです。具体的には米ぬかや籾殻、油粕などを撒いていきます。この時できればそこの畑で採れたものを撒くのがベストですが、ない場合は購入するか知り合いに分けてもらったもので代用しましょう。
補いを撒く量はうっすらと雪が積もるくらいの量で大丈夫です。たくさん撒いても時には逆効果になってしまいますので気をつけてください。
⑦刈り草を畝に盛る
畝が成形できたら次にはじめに刈って出しておいた草を畝の畝に振りかけます。これを草マルチといいます。こうすることで裸になった土を乾燥から防ぐことができますし、余計な草が生えてくるのを抑える目的もあります。自然界では裸の状態の土というのはありませんので、裸の状態の土というのはとても不自然なのです。
もし冬などで刈り草が十分にない時は、違う場所の草を刈って持ってくるか近所の農家さんに稲藁(いなわら)を少し分けてもらえないか聞いてみましょう。できれば畝の上が”こんもり”となるくらい被せておきましょう。
刈り草がススキやセイダカアワダチソウのような長い草の場合は、ある程度短く切ってからバラバラにまんべんなく振りまくようにしましょう。そうすることで強い風が吹いても飛ばせれにくくなりますし、均一に土を乾燥から守ることができます。
⑧必要に応じて鎮圧する
最後に必要に応じて鍬の背などで畝を上から押さえて『鎮圧(ちんあつ)』しておきましょう。この作業の狙いは草と土を密着させておくことで、土の乾燥を防ぐことにあります。
あまり土が乾燥しすぎると微生物の活動が鈍くなるのです。まだ自然農を始めたばかりであまり地力がない畑の場合は鎮圧しておいた方がいいでしょう。地力が充分で団粒構造の土が出来上がっている畑の場合は省いても大丈夫です。
水捌けが悪い畑の水捌け対策
水捌けの悪い畑の場合、長く雨が続いた場合に畝の溝に水が溜まりやすく、なかなかはけていかないことがあるます。そんな畑の場合は水が抜けていくように水路を作っておくと良いでしょう。
この時に気をつけることは『畑の高低差をあらかじめ考慮してつくること』です。当たり前ですが水は高いところから低いところに流れます。高いところに流れるように水路を作っても水ははけていきません。
事前に長雨が続いた時などに、畑のどの部分にどの程度の水が貯まるのかもしっかりチェックしておきましょう。
畑の状態をチェックしたい方はこちらの記事がおすすめです。
畝立てしたあとはどうする?
自然農の場合、一度作った畝は何回も使い回しします。畝の中には自然の営みが出来上がってくるので土は段々と肥沃になってきます。そうなってきたら今度はその環境をできるだけ壊さずにすることが大切です。
ただ畝はどうしても時間が経つにつれて端が崩れたり、収穫するにつれて畝の上の土が減っていってしまいます。そしたら適宜補修していきます。この補修作業は農閑期である1月・2月あたりにやっておくと春の種植えがスムーズに行えるでしょう。
まとめ
今日は自然農の畝作りについて紹介させていただきました。自然農において畝作りは大切な基礎作りです。はじめのうちはスムーズに作ることができないかもしれませんが、何個も作っていくうちにコツやかんどころが掴めてくると思います。
畝の長さや高さや幅、溝の深さなどはかなり迷う部分ではありますが、あまり神経質にならずにとりあえずチャレンジしてみて修正しながら上手くなっていきましょう。
大切なことは一つ一つの工程の意味を考えながら、丁寧に行うことです。それではありがとうございました。
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